企業が存続する限り、リスクが完全になくなることはありません。
そのため、リスクを管理し、適切に対策しておくことが重要です。
しかし、いざリスクに向き合おうとしても、何から始めれば良いのか迷う場合もあるでしょう。
実際リスクに関連する用語は複数あり、その考え方や手法もさまざまです。
この記事では、特に混同しやすい「リスクマネジメント」と「リスクヘッジ」の違いについて解説します。
また、実際にリスク管理する際の手法や手順についても紹介します。
リスクマネジメントとリスクヘッジについて正しく理解し、企業リスクの適切な対策をしたい方はぜひ参考にしてください。
目次
リスクマネジメントとリスクヘッジの違い

リスク管理に関わる用語に「リスクマネジメント」と「リスクヘッジ」があります。
ここでは両者の違いを、以下3つの観点から解説します。
- 定義
- プロセスの範囲
- 具体例
ネットリテラシー検定は、
それぞれの役割を理解して、適切なリスク管理を進めるための基礎を確認していきましょう。
インターネット上のリスクに対応できる人材を計画的に育成するための検定です。
違い①:定義
リスクマネジメントとリスクヘッジの定義は、以下の通りです。
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リスクマネジメント |
リスクヘッジ |
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定義 |
リスクを把握・分析し、事前対策や緊急時対策を講じること |
リスクによる損失を回避・軽減するために、取引や契約、分散などの手段を用いてリスクを相殺・移転すること |
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焦点 |
企業運営におけるあらゆるリスク |
個別のリスク |
リスクマネジメントは、組織が直面するさまざまなリスクを特定・分析・評価し、適切な対策を講じたうえで継続的に監視・改善していく包括的な管理活動を指します。
一方、リスクヘッジは損失を予防するための具体的な対策を指し、個別のリスクに焦点を当てて行います。
両者に共通しているのは「リスクによる損害を最小限に抑える」という目的です。
万が一リスクが現実化すると事業存続に影響する可能性があります。
そのため、全体的なリスク管理である「リスクマネジメント」と、具体的なリスク対策である「リスクヘッジ」は、すべての企業にとって欠かせないものです。
違い②:プロセスの範囲
リスクマネジメントとリスクヘッジでは、含まれるプロセスが以下のように違います。
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リスクマネジメント |
リスクヘッジ |
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|
リスクマネジメントには、リスクに対する方針決定や洗い出し〜対策立案まですべての工程が含まれます。
そのため、リスクヘッジはリスクマネジメントの中で実行される具体的な対策手段の一つと位置付けられます。
リスクマネジメントは対策の立案・実行で終わりではなく、何度も見直して改善する必要があります。
なぜなら、刻一刻と社会情勢や企業の状況は変化し、それに伴いリスクの発生確率や損失の大きさも変化するためです。
適切なリスクヘッジを実行するためにも、定期的にリスクマネジメントのPDCAを回していくことが大切です。
違い③:具体例
リスクマネジメントとリスクヘッジの違いをより明確化するために、それぞれ具体例を挙げて比較してみましょう。
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リスクの例 |
リスクマネジメント |
リスクヘッジ |
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情報セキュリティ |
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人的要因への対策が急務と判断し、社内ルール構築と社員教育を行う |
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災害 |
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大地震の確率が高い地域のため、揺れに強い設備にする |
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海外進出による影響 |
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情勢の影響による販売停止を避けるため、販路を複数国に拡げる |
このようにリスクマネジメント・リスクヘッジは、企業の信頼性を守っていくため・事業を展開していくために、必ず行うべき取り組みです。
リスクマネジメント・リスクヘッジと混同しがちな用語

リスクマネジメント・リスクヘッジには類似した用語が複数あります。
その中でも特に混同しがちな「リスクアセスメント」「リスクコントロール」「クライシスマネジメント」の意味を解説します。
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リスクアセスメント |
リスクを特定し、どのような危険性があるか分析・評価すること |
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リスクコントロール |
リスクに対して以下のような対策を講じ、損失の発生頻度と大きさを減少させること
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クライシスマネジメント |
問題が起こったケースを想定して、初期対応や二次被害防止などの対策を講じること |
これらは、すべてリスクマネジメントにおいて必要な要素です。
特に、リスクアセスメントは労働安全衛生法第28条の2において、事業者が実施に努めるべきものとして位置付けられています。
また、リスクコントロールの分類はリスクヘッジの方針を決める際に基本となる考え方です。
いわゆる危機管理であるクライシスマネジメントと合わせて対策を講じておくことで、企業経営をより安全に行っていけるでしょう。
引用:厚生労働省|労働安全衛生法 第28条の2
リスクマネジメントとリスクヘッジの重要性

近年、コンプライアンス違反や品質不良など、企業で発生したさまざまな問題を耳にすることが増えました。
問題が表面化しやすくなっている理由には、以下のような背景があります。
- 外部委託や雇用形態の多様化によりルールの浸透が難しい
- SNSの普及によりトラブルが広まりやすい
- サイバー攻撃が巧妙化しており対策が追いつかない
- グローバル化が進み価値観が混在している
問題が起こると、企業自体の社会的信用性が低下し、最悪の場合は損失により企業経営が厳しくなる事態も考えられます。
そのため、事前に予防するための対策はもちろん、リスクが発生した際に迅速な対応ができるよう体制を整えておくことが重要です。
企業が安定して事業を継続するためにも、「リスクマネジメント」や「リスクヘッジ」の重要性は非常に高いといえるでしょう。
なお、情報漏えいの原因や対策については、こちらの記事で解説しています。
【関連記事】企業が行うべき情報漏えいのリスク対策とは?ネットリテラシー教育の重要性も
リスクマネジメントとリスクヘッジの手法と手順

リスクマネジメントとリスクヘッジに取り組む際の手法と手順は、以下の通りです。
- 現状を整理する
- リスクを特定する
- リスクを分析・評価する
- リスクヘッジの対策を立案する
それぞれのポイントを解説するため、リスク管理を強化したいと考えている方は参考にしてください。
手順①:現状を整理する
リスクマネジメント・リスクヘッジにおける最初のステップは、組織内外の現状を把握し共有することです。
例えば、以下のような工程です。
- 社内・社外のステークホルダーとリスク管理について協議する
- 組織が社会的に置かれている立場や事業状況などを把握する
- 子会社や委託先の会社をリスク管理の対象に含むか判断する
- リスク管理の人員や予算を検討する
ステークホルダーとは、社員や取引先、株主など企業活動に関わるすべての利害関係者を指します。
リスクマネジメントの際は、ステークホルダーからの理解を得ることが大切です。
各プロセスで、リスク管理の現状と今後の方針について共有しましょう。
手順②:リスクを特定する
次に、考えられるすべてのリスクを洗い出します。
その際、念頭に置いておきたいことは「発生するリスクや対策は部署によって異なる」という点です。
そのため、各部署に聞き取りを行い、偏りが出ないよう注意する必要があります。
可能であれば、複数人が集まりアイデアを自由に出すブレインストーミング(集団発想法)を取り入れると効果的です。
なお、リスクはさまざまな分類方法がありますが、一般的には以下のような分野に分けて整理されます。
- 事故・災害リスク:自然災害や交通事故など
- 法務・訴訟リスク:製造物に関わる訴訟・知的財産権侵害など
- 財務リスク:投機失敗や企業買収など
- 経済リスク:為替変動や税収改正など
- 労務リスク:ハラスメントや不正など
- 政治リスク:戦争や貿易制限など
- 社会リスク:機密漏えいや産業スパイなど
これらの分類に当てはめて洗い出すと、リスクの見落としを防ぎやすくなります。
手順③:リスクを分析・評価する
リスクを一通り洗い出した後は、以下3つの手順で「リスクの大きさ」を算出します。
- 「リスクの影響」をレベル別または数値化して評価する
- 「リスクの発生確率」をレベル別または数値化して評価する
- 上記2つを縦軸・横軸に配置しリスクマトリックスを作成する
リスクマトリックスとは、リスクの大きさを可視化したものです。
例えば、以下のように作成できます。
▼リスクマトリックスの例(縦軸:影響、横軸:発生確率)
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影響大 |
大地震・噴火 |
機密情報漏えい |
為替変動 |
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影響中 |
役員不正 |
製造物訴訟 |
求人難 |
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影響小 |
貿易制限 |
不良債権 |
株価変動 |
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発生確率低 |
発生確率中 |
発生確率高 |
リスクマトリックスの右上が「優先度:高」、左下が「優先度:低」というように仕分けられます。
最も優先して対策すべきリスクは、影響が大きく発生確率が高いものです。
手順④:リスクヘッジ立案を行う
優先度を可視化できたら、リスクヘッジへ進みましょう。
立案の際は「リスクコントロール」の考え方を取り入れると、適切な対策を考えやすくなります。
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回避 |
リスクにつながる活動自体を停止する |
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損失防止 |
損失発生の頻度低減のため事前対策を講じる |
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損失削減 |
損失発生時の拡大を防ぐための対策 |
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分離・分散 |
リスクを複数に分散する |
あらゆる部署や立場からみて現実的に可能な対策を検討しましょう。
決定した立案は組織内への周知を徹底し、マニュアル化しておくと安心です。
また、リスクマネジメントは1回きりではなく、繰り返してこそ意味を持ちます。
定期的に見直し、現在の状況にリスクの評価や対策が合っているかチェックしていくことが大切です。
リスクヘッジ能力を高めるためには検定の導入も効果的

企業が行うべきリスクヘッジの一つに「情報漏えい防止策」があります。
近年、サイバー攻撃の巧妙化やクラウドサービスの利用率増加により、情報セキュリティの必要性が高まっています。
情報漏えい防止には、社員1人ひとりのセキュリティ意識向上が欠かせません。
そのために効果的な方法が「ネットリテラシー検定」です。
当機構のネットリテラシー検定では、インターネットを利用するうえでの基礎知識をはじめ、法律に基づいたデータの扱い方やセキュリティ上してはいけない行動などを体系的に学習できます。
対外的にもネットリテラシーが一定以上である証明になるため、企業におけるリスクマネジメントの一環として適しています。
情報セキュリティ研修の重要性や学習内容は、こちらの記事を参考にしてください。
【関連記事】情報セキュリティ研修の重要性とは?主な学習内容や効果的な進め方を解説
まとめ:企業の発展と安定にはリスクマネジメントとリスクヘッジの両立が重要

企業が安定して事業を継続し、さらに発展していくためには、包括的なリスクマネジメントと適切なリスクヘッジが重要です。
そのためには、組織内にリスク管理の知識が豊富な人材がいると安心です。
また、リスク管理のルールを整備しても、社員のリスク管理に対する意識が低くては、効果的なリスクヘッジになりません。
特に、情報セキュリティリスクは、社員全員がリテラシーを身につけることで、リスクの発生頻度低減につながります。
当機構のネットリテラシー検定では、インターネット利用に伴うリスクについて事例をもとに学習できるため、企業のリスクヘッジにも効果的です。
リスクマネジメントの一環として社員のセキュリティ意識を高めたい方は、ぜひ「企業・団体・学校のご担当者様へ」のページをご覧ください。
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