刑事法では、風評の流布等による経済的評価に損害を与えた場合の罪を決めていますが、民事では、それ以上に幅広く、故意/過失による信用毀損についても責任が求められます。
「バカッター」という言葉を聞いたことはないでしょうか。食品の冷蔵庫に寝転んだり、廃棄される食材を使ってふざけてあそんだり、不謹慎・不適切な行動の写真を撮影してブログやSNS等に掲載して、自らの破天荒な行動を自慢げに公表した結果、本人への批判だけではなく、関係していた団体や企業の社会的信用を傷つけ、大きな損害を与えてしまうことが相次いでいて後を絶ちません。
例えば外食企業のアルバイトが、店内にある食材や機材を使って遊んだ写真を掲載したため、食の安全が保てなくなり、客足が途絶えたり、企業の社会的信用が傷つけられたりしため、食品を廃棄、機材を洗浄、取り替えるなどの費用負担がかかったばかりか、当該店舗の撤退に追い込まれた例もあります。このような場合、アルバイトで得る給料とは比べものにならない莫大な損害賠償を請求されます。
なぜそうしたことが繰り返されるのでしょうか。
ネットが普及する以前から若者の愚かな「武勇伝」はありましたが、その人を知っている範囲とその周辺にしか広がらなかったものです。しかし、一度ネットに掲載されてしまうと、思わぬ拡散をしてしまい、後からまずいと思って本人が書き込みを消しても制御がきかなくなります。仲間内の悪ふざけではすみません。
もちろん、鬼の首を取ったように徹底的に糾弾して、拡大する人たちにも問題がないとはいえませんが、第一の原因は不適切な行動です。ネットに書き込まなければとか、仲間内にだけ制限すればよいのではないかということを考えるよりも、社会の一員としての自覚を持つことが大事でしょう。そこに加えてネット社会で書き込めばどうなるか、結果を予想して、これまでの「失敗の事例」に謙虚に学ぶことが必要ではないでしょうか。
第1章 情報セキュリティ
第2章 マナーと倫理
第3章 法制度(刑事事件)
第4章 法制度(民事事件)
第5章 知的財産権
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