あなたが、性別や人種、生まれた地域や国籍、職業や学歴、経済的状況を理由として、差別されたり、罵声を浴びせられたりしたらどのように思うでしょうか。大きなショックを受けるだけでなく、人間関係への不信感を募らせたり、社会で暮らしていくことが不安になったりしますね。 「差別をしてはならない」「差別のない明るい社会を」というのは、誰しもキャッチフレーズとしては理解するでしょうし、公然と反対はしないでしょう。しかし、残念ながら世の中に「差別」は存在しています。
その人の属性を理由として、ののしったり、地域や国から排除したり、場合によっては殺害を予告したりという不穏当な表現やデモがあり、これを「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」といいます。日本は歴史的に植民地を有していたこともあり、旧植民地の出身者とその子孫が多く日本国内に住んでいます。また、日本からの移民として海外に渡った日系人の子孫もいます。このほか、グローバル化の進展に伴い、短期的な観光客だけでなく、世界各地から留学や研修、ビジネス、結婚等の目的で来日して長期的に暮らしている人々が大勢います。こうした人々が暮らしている地域社会、職場や学校、団体に対して排外的で侮蔑的な罵声をあびせたり、示威行動をしたりする「ヘイトスピーチ」が近年各地で大規模化して問題となっています。
こうした威圧的な「ヘイトスピーチ」に対しては、「威力業務妨害」や「脅迫」といった現行法で対処してきましたが、2016年5月より、「ヘイトスピーチ」を解消するための国や地方公共団体の責務を定めた「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(別称:ヘイトスピーチ規制法、ヘイトスピーチ対策法、ヘイトスピーチ解消法)が制定されています。
法律が整備されたからといってただちに問題解決に繋がったり、すべての差別がなくなったりするわけではありません。また、性別や民族、人種、国籍は生まれるときに本人が選べるものではありません。それだけでなく、性的な少数者や政治的な思想、宗教等に対しても同様の差別問題があります。そうしたことを理由に「差別」されたり、排除されたりするのは、とてつもない人権侵害になります。
このほか、学歴などは一見、本人の能力に応じたもので「合理的な区別」と思われがちですが、経済的な理由や地理的な理由等で進学できないといった、本人の努力では解決できない事情もあります。インターネットが普及する以前の社会でも深刻な差別問題はありましたが、インターネット上では一度書かれたことの撤回が難しく、取り返しが付かなくなるため、差別を助長する行為につながらないよう十分注意しなければなりません。
第1章 情報セキュリティ
第2章 マナーと倫理
第3章 法制度(刑事事件)
第4章 法制度(民事事件)
第5章 知的財産権
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